【論文:精読】

2013年5月21日 (火)

オキシトシン点鼻薬は統合失調症の社会認知障害を改善させる

Effects of single dose intranasal oxytocin on social cognition in schizophrenia

Michael C. Davis, Junghee Lee, William P. Horan, Angelika D. Clarke, Mark R. McGee, Michael F. Green, Stephen R. Marder
Schizophrenia Research

○序論
統合失調症では社会認知の障害が見られ、社会生活機能に寄与する。
オキシトシンについて、血漿中のオキシトシン濃度と精神症状が相関する、表情認知と相関するという報告がある。
オキシトシン点鼻薬の付加療法による治療は精神症状を改善させるという報告が3本ある。
オキシトシン点鼻薬の付加療法の表情認知に対する効果は、低容量では悪化、高容量で改善させるという報告がある(2本)。
オキシトシン点鼻薬の付加療法は14日間の投与で心の理論は良くなるが他の社会認知領域は変わらないという報告がある。
目的:オキシトシン点鼻薬の付加療法の社会認知障害への改善効果を複数の課題を用いて、低次処理と高次処理に分けて評価する。
オキシトシン点鼻薬の付加療法による効果を1週間の投与期間で、二重盲検デザインで検討した。
○方法
対象:統合失調症。男性患者23名。平均年齢48,6歳。PANSS合計で71から75くらい。精神症状が安定いる。過去6ヶ月は入院歴が無い。
薬剤:オキシトシン点鼻薬は50 IU/ml( Inland Compounding Pharmacy (Loma Linda, CA).)を用いた。
社会認知課題:①心の理論課題、②共感性、③社会知覚(Half-PONS課題)、④表情認知とした。うち、心の理論課題の嘘検出条件、社会知覚(Half-PONS課題)、表情認知課題の3つのコンポジットスコアを低次社会認知スコアとし、心の理論課題の皮肉検出条件、共感性課題のコンポジットスコアを高次社会認知スコアとした。
臨床評価:精神症状はPANSS、CGI-S、CGI-I、全般的機能はGAF
○結果
介入前について、プラセボ群とオキシトシン群では4つの社会認知課題のコンポジットスコア、および個々の検査いずれでも差が無かった。
介入後について、プラセボ群とオキシトシン群では4つの社会認知課題のコンポジットスコアに差が無かった(有意傾向はあった)。しかし、高次社会認知スコアでは、オキシトシン群が有意に上昇していた(p=0.045,効果量d=1.00)。
精神症状、全般的機能はプラセボとオキシトシン群の間で差が無かった。
○考察
・先行研究に一致するものとそうでないものがあった。本検討の患者群の年齢、オキシトシンの容量で説明できるだろう。
本検討の介入後の社会認知の検査(全1時間)は、オキシトシン点鼻の30分後に行ったが、現在のところ、人で脳脊髄液におけるオキシトシン濃度について計測した研究はないので、このような方法の妥当性は分からない。しかしバゾプレッシン点鼻は80分後に有意に上昇する、オキシトシン点鼻によって唾液濃度は7時間以上増大するという知見を踏まえると本研究の投与法は妥当であるといえるだろう。
・1週間投与した本研究では精神症状への影響が無かったが、先行研究は2週から8週間オキシトシンで治療していたからであろう。

2011年5月23日 (月)

疼痛治療薬のプレガバリンは情動予期時の情動関連領域の活動を調整し、抗不安作用効果を示す

Pregabalin Influences Insula and Amygdala Activation During Anticipation of Emotional Images

Robin L Aupperle, et al.

Neuropsychopharmacology (2011) 36, 1466?1477;

抄録全訳
プレガバリン(Pregabalin;以下PGBと訳す。商品名はリリカ)は全般性不安障害や社交性不安障害に対する抗不安作用のある可能性がある薬剤である。PGBは電位依存カルシウムチャネルに作用しGABA作動性の抑制性の活動を上昇させて様々な神経伝達物質の放出を抑制する。健常者を対象にSSRIやベンゾジアゼピン系抗不安薬を用いてfMRIを計測した研究では、情動予期や情動反応の生起時の扁桃体、島皮質、内側前頭前野(以下mPFC)の神経活動が抑制された(豊巻注、これらは不快情動関連領域である)。本研究の目的はPGBの投与が情動予期時においてこれらの領域を抑制するかどうかを検討することである。16人の健常者を対象にし、薬剤の投与はダブルブラインドとし、プラセボ、実薬をランダム化されたクロスオーバーで投与した。プラセボとPGB(50 mgと200 mg)が投与された後1時間後に、不快情動予期、もしくは不快情動予期が生じる課題を実施しfMRIを計測した。解析の結果、PGBは①快・不快情動予期時の左扁桃体と前部島皮質の賦活を減少させ、②他方で前部帯状皮質(以下ACC)の賦活は上昇させた。扁桃体前部はPGB投与量の増大によって、不快情動予期において賦活が増大し、快情動予期においては賦活が減衰した。情動予期や情動生起時の扁桃体や島皮質の活動抑制は薬剤の種別を超えて不安に関与する共通した領域が存在することを示している。PGBで誘発されるACCの活動増強は情動制御に関してトップダウン的な調整を促進するというユニークな作用があることを示すだろう。これらの結果はさらなる抗不安効果のある薬剤を用いた薬物fMRI(pharmaco-fMRI)による検討で妥当性が検証されることが望まれる。

序論(主な知見だけ紹介)
不安障害の頻度はアメリカでは18%である
PGBは100-600mg/dayで半数のGAD、SAD患者が反応する
ベンゾジアゼピン系薬剤の急性投与は表情、痛み刺激、リスク意志決定場面での島、扁桃体、mPFCでの賦活を低下させる
SSRIの健常者での慢性投与は情動予期、表情に対する島、扁桃体、mPFCでの賦活を低下させる
予期不安は不安障害の重要な症状である
情動予期課題は島、扁桃体、PFCを活性化させるし、抗うつ薬と抗不安薬の標的にもなる
扁桃体、島皮質の減衰は到来する刺激の情動反応や将来の身体状態の予測を修正する効果がある
PGBは興奮を鎮静する効果は臨床試験では報告されておらず、むしろ恍惚感が誘発された報告もある
情動予期時の扁桃体の賦活は快・不快で違いがないという健常者の知見がある
扁桃体の機能について不快情動の反応ではなく、刺激の顕著性の処理に関与するとしたほうがよい考えがある
CPT遂行によって痛み刺激の予期に対する扁桃体の賦活が減少する

方法

対象:健常者16名。男性10名、女性6名。平均年齢23.2歳。全員右利き。全被験者は以下の3つの事態でfMRI計測に参加した。それぞれ、実薬(PGB)50 mg低用量投与時、実薬200 mg高用量投与時、プラセボ投与時であった。それぞれの介入は薬剤が完全のwash outさせるために1~3週間空けて行った。それぞれの介入は被験者に対して疑似ランダムで割り付け、さらに二重盲験法で薬剤を投与した(被験者も検査者もどの薬剤を投与したか分からない)。構造化面接を行い、DSM-ⅣのⅠ軸診断に該当する疾患を持つ者を除外した。
課題:CPT(持続的注意課題)と情動予期課題を融合した課題を行った。左向き、右向きの矢印が画面に呈示され、それに応じて反応させる。同時に500 Hzで250 msの持続時間の聴覚刺激が2秒おきに呈示される。
条件:基本的には背景色はグレーであり、もし250 Hzの聴覚刺激と同時に背景色が青色に変化するとポジティブな内容の情動喚起スライドが呈示される。1000 Hzの刺激と同時に黄色に変化したらネガティブな内容の情動喚起スライドが呈示される。青色や黄色の背景の呈示は6秒間持続し、情動予期に相当する。情動喚起スライドは2秒間呈示される。視覚刺激はそれぞれ17枚の画像から成る。International Affective Picture System(IAPS)から採用された。CPT課題について、刺激間間隔は変化するようになっており平均8秒であった。課題全体の所要時間は580秒であった。
薬剤投与:PGBと実薬はMRI計測に先立つ1時間前にダイエットコーラと一緒に経口投与させた。その後、15分、30分、75分、90分、110分後に血漿中濃度を測定した。内服前と計測後に、眠気の尺度(Karolinska Sleepiness Scale)、不安尺度(State-Trait Anxiety Inventory:STAI)、また不安、焦燥、緊張、疲労、めまい、気分高揚、神経質、震えについてビジュアルアナログスケールで評価した。
MRI撮像プロトコルと解析:3T(GE社)を使用。レグレッサーは①ポジティブ情動予期、②ネガティブ情動予期、③ポジティブ情動喚起スライドの呈示、④ネガティブ情動喚起スライドの呈示、⑤realignのパラメータ(roll、pitch、yaw)。本研究では特に情動予期の2条件に注目し、%シグナルチェンジを算出し線形混合効果モデルに基づく統計で分析した。ROI(関心領域)は情動処理、情動予期、不安障害の知見に基づいて両側扁桃体、内側前頭前野、島皮質に決定した。内側前頭前野には前部帯状皮質(BA32とBA24)と腹内側前頭前野(BA10)を含めた。それぞれの関心領域のボリュームをマイクロリットルで表現した。モンテカルロシミュレーションを行って、通常の危険率を用いて統計的に有意となるクラスターサイズを求め、それをマイクロリットルで表現している。その結果クラスターレベルで統計学的に有意と見なせるサイズは扁桃体で192マイクロリットル、内側前頭前野では320マイクロリットル、島皮質では256マイクロリットルであった。またボクセルレベルでの補正した有意水準もそれぞれの部位で算出した。情動予期の種類と薬剤介入の主効果と交互作用について分析し、下位検定も行った。
行動データ、質問紙などのデータも薬剤介入条件間で比較した。

結果
○質問紙・身体的症状・行動指標
PGBは高投与量条件でめまい感や疲労感、眠気などが計測後に強くなっていた。CPTの反応時間、正答率もプラセボよりPGB投与時、特に高投与量条件で不良になっていた。
○血漿中濃度の推移
省略
○fMRI
1.PGB投与の有無にかかわらずポジティブ予期条件でネガティブ予期条件よりも活動が増大していた部位
両側扁桃体、両側後部島皮質(快>不快)
2.PGB投与の有無にかかわらずネガティブ予期条件でポジティブ予期条件よりも活動が増大していた部位
右前部・中部島皮質(不快>快)
3.情動予期問わずにPGB内服によって変化があった部位
・PGB投与によって信号量が低下する部位
 左扁桃体、両側島皮質
・PGB投与によって信号量が増大する部位
 前部帯状皮質(mid ACC:豊巻注脳梁膝のすぐ前のrostral ACCに相当する)が増大していた
4.情動予期条件とPGB投与量で交互作用があった部位
左扁桃体前方部、腹側前部帯状皮質(ともに前述の投与量に感度のあった部位とは異なる領域であることに注意)
左扁桃体:快情動予期に関しては信号量はプラセボ>50 mg>200 mgという傾向で、不快情動予期に関してはプラセボ<50 mg<200 mgと対照的であった。
プラセボでは快情動>不快情動、50 mg投与では快情動>不快情動であった。
腹側前部帯状皮質:快情動予期に関しては信号量はプラセボ>50 mg>200 mgという傾向で、不快情動予期に関してはプラセボ<50 mg<200 mgであった。
プラセボでは快情動>不快情動、50 mg投与では快情動>不快情動であった。
5.ビジュアルアナログスケール、行動指標を共変量にした解析
いずれの尺度、行動指標と全脳の各ボクセルでの信号量と相関する部位は無かった。

考察
本研究はプレガバリン(PGB)が情動予期課題の不快情動予期時において扁桃体の活動を抑制したことを初めて示した研究である。
他にもSSRIやベンゾジアゼピン系抗不安薬による同様の知見は示されている。ベンゾジアゼピン系薬剤はGABA系を調節して効果があるだろうし、SSRIはセロトニン系に調節して効果を発現させるだろう。
・PGBは快情動予期や不快情動予期の扁桃体や島皮質の賦活を低下させたが、しかし臨床試験では感情鈍磨の報告はなく、むしろ恍惚感が誘発されたという報告もある。さらなるPGBを用いたfMRI研究によって、個人事の情動体験に対する主観的な反応と扁桃体と島皮質の活動の関係を探索すべきだろう。
・情動予期と投与量とで交互作用があった前方扁桃体について、ここは不快情動予期条件で、投与量が増大するにつれて信号量が増大していた。これは一般的な扁桃体に関する知見とは一致しない。扁桃体はさらなる下位領域に分かれており、それぞれ異なる機能に寄与するだろう。一般的な情動喚起刺激に対する反応や他の下位領域への調整などは外側基底核が関与する。PGBが扁桃体のそれぞれの下位領域への影響の仕方が異なる可能性がある。
・前部帯状皮質はPGB投与によって信号量が増大する部位であったが、これは著者らにとって意外であった。
抗不安作用のある薬剤を用いた先行研究ではこの部位は影響しないか、活動を減衰させる知見がある。内側前頭前野や前部帯状皮質は辺縁系の賦活による自律神経系の調節に第1に関わる部位である。PGBによるこの領域の活動増大は情動予期に対するトップダウン的な自律神経調節を意味するだろう。
・様々な分析の結果200 mgの投与はfMRI信号に対して有意な作用を示す。これは臨床的知見でも200 mgは不安に対して効果があることが知られ、50から150 mgでは少ししか効果が無いという知見と一致する。
・PGBの臨床症状や行動指標への影響について(省略)
・多くの研究では不快情動予期時に扁桃体が賦活する研究が多いが、本研究では快情動予期のほうが増大していた。先行研究には健常者群で情動間で扁桃体の賦活に差が無いという報告もある。扁桃体の機能の中で不快情動の生起に関与すると考えられているが、情動内容ではなく刺激による顕著性(saliency of stimuli)の処理に関与すると考えた方がよいという報告もある。本研究で用いた情動喚起スライドのIAPSは情動価とは別に覚醒度(arousal)という軸もあり情動予期条件間で同じに揃えているので、快情動予期と不快情動予期で同程度に顕著性を生じさせ、扁桃体を活性化させたのかもしれない。(不快情動予期だけで扁桃体が賦活したNitschkeら(2004)の先行研究は非生物の素材で顕著性が低かったので、情動価だけに反応にしたのだろう)。
・先行研究では、CPTを完全に遂行すると痛み刺激の予期に対する扁桃体の賦活が下がることが示されている。
・本研究ではwhole-brain anaysisではあらかじめROIとして考えていた部位以外の場所でも課題に関連した活動が見られた。例えば前頭前野や、側頭葉、後頭葉などである。これは情動関連領域に対する課題特異性が低いということになるが、他の先行研究でもそのような傾向はあった。しかしながら、本課題は情動予期の島皮質と扁桃体の賦活が薬剤で抑制されたので、新規の抗不安効果を検討するには有用である。

という研究。

これは非常に重要な研究だと思った。
プレガバリン(商品名はリリカ)は感覚信号の伝達に関与する細胞にある電位依存性カルシウムチャネルのα2δサブユニットを阻害しそれが関与する後々の神経伝達を抑制し、慢性疼痛などに鎮痛効果がある薬剤である。この薬剤が本研究のような中枢神経レベルで調節されるような不快情動や快情動の予期が生じる状況で賦活を抑制するのは大変興味深い。結果は必ずしも不快情動予期だけを減衰させるわけではない所が解釈がややこしいが、情動予期が持つ顕著性や覚醒の上昇といったものは情動の方向性・価値(快か不快かということ)によらず共通して生じる過程なのでこれを抑制することで主観的に感じられる興奮が沈むというような感覚に寄与するのだろう。
この薬剤が直接情動関連領域にある神経細胞、もしくはそれらに投射している神経細胞に作用するのか、そうでないかということである。もし、後者のような末梢に作用して抗不安作用があるのであれば非常に面白いと思う。例えばダマジオのソマティックマーカー仮説のような情動予期や、意志決定の前に生じる行動の記憶に随伴する体性感覚や身体反応の痕跡的な記憶は、もしかするとそれなりに末梢から中枢神経に投射する感覚神経をある程度部分的に賦活させるかもしれない。その過程にプレガバリンが作用して反応を減衰させて中枢の情動関連領域での神経伝達を減衰させるのであれば、不安や恐怖という情動は中枢神経だけのものではなく、痛みとかのような実体を持つ感覚も情動の生起に含まれるのではないか。それゆえ、不安や恐怖の減衰には、もちろんそれを生起する不快情動関連領域への直接的な制御が有効だけれども、直ちに閾上に上ってこない痛みや他の内臓感覚といった身体感覚に関わる神経系について一次ニューロンレベルでの抑制が二次以降、最後の中枢の不快情動の生成の抑制にも寄与するかもしれない。多分このような可能性は製薬会社も考えたことはないだろう。
既存の抗不安薬や抗うつ薬とは違う疼痛や身体感覚に関与する薬剤について、向精神薬になりうる可能性がありこうした薬剤の研究は今後も注目していきたい。

toyomaki
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2010年10月 6日 (水)

制吐剤のオンダンセトロン(セロトニン5HT3受容体阻害剤)の付加療法は統合失調症の陰性症状と認知機能障害(記憶)を改善させる

Added ondansetron for stable schizophrenia: A double blind, placebo controlled trial
Shahin Akhondzadeh et al.
Schizophrenia Research 107 (2009) 206.212

アブストラクト完訳
5HT3受容体は統合失調症の精神症状や認知機能障害に関与することはよく知られてきた。本研究の目的は5HT3受容体アンタゴニストのオンダンセトロンが慢性の統合失調症の治療、特に認知機能障害の治療の補助剤になるかどうかを検証することである。精神症状が安定している慢性の統合失調症患者に2重盲険法でオンダンセトロンを12週間投与した。30人の通院、入院患者を対象とした。全ての患者はDSM-Ⅳ-TRで統合失調症と診断された。条件を適切に設定するために、主剤としてリスペリドンを用いていて最低8週間、容量を固定して治療を受けている患者を対象とした。患者は15人ずつ無作為に割り付けられ、オンダンセトロン(8 mg/day)か、プラセボが、それぞれリスペリドンに加えて付加された。精神症状はPANSSを用いて評価した。認知機能は認知機能検査を用いて評価した。評価は、付加療法開始前、開始後8週、12週で行われた。PANSSと認知機能検査が付加療法のアウトカム指標として用いた。オンダンセトロン使用群では、試験中において陰性症状尺度得点と総合精神病理尺度得点、PANSS総合得点が改善した。またオンダンセトロン使用群ではWMS-Rの下位検査である視覚性再生、視覚性対連合、図形の記憶で改善が見られた。本研究から、オンダンセトロンは慢性の統合失調症の特に陰性症状や認知機能障害に対する補助的な治療薬になることを示した。

序論
定型抗精神病薬は50年以上前から用いられてきたが、有効性と忍容性には限界がある。定型抗精神病薬を用いても精神症状が持続したり、機能レベルが低下したり、不快で生活に支障をきたす副作用が起きたりする。統合失調症では認知機能障害が現れ、その重傷度は精神症状以上に機能的予後に影響することが知られている。
認知機能障害は統合失調症の患者の75~85%で顕在化しており、多くが発症前から現れている。主に障害されている認知領域は言語流暢性、作業記憶、実行機能、持続的注意、視空間認知課題、処理速度である。定型抗精神病薬や非定型抗精神病薬で適切に治療を受けても認知機能障害は持続して存在する。抗精神病薬に顕著な認知機能改善効果が無いことから、認知機能障害を標的とした多剤併用療法の開発が促進された。
5HT3受容体は多様な機能から統合失調症の認知機能障害を改善させる可能性があると考えられていた。動物での行動薬理学的研究では、5HT3アンタゴニストは抗不安作用、記憶増強作用があることが知られている。例えば、ラットで辺縁系にDA、アンフェタミン、2メチルセロトニンを注入すると運動量が増大するが、オンダンセトロンの注入はそれを改善する。5HT3アンタゴニストは統合失調症の認知機能障害を改善させる新規薬剤になるうると考えられていた。オンダンセトロンを用いた小規模の研究、症例報告では精神症状、運動系の副作用をに効果がある。オンダンセトロンの短期間の投与ではレイ複雑図形による視空間記憶課題の成績が改善する。オンダンセトロンは慢性患者、治療抵抗性患者のハロペリドール治療を増強し陰性症状、認知機能障害を改善させた。

方法
・対象
30人の統合失調症患者が参加した。28人が外来患者であった。女性11名、男性19名であった。22歳から44歳までであった。DSM-Ⅳ-TRで診断した。少なくとも4週以上は精神症状が変化しない(PANSSで20%未満の変化)患者を対象にした。患者をオンダンセトロン(8 mg/day)群とプラセボ群に無作為に割り付けた。

・認知機能検査
神経認知(情報処理的な認知機能)は6領域について評価した。実行機能はWisconsin Card Sorting Test、視覚性記憶はWMS-Rから3つの下位課題、言語性記憶はWMS-Rの論理記憶と言語対連合を用いた。作業記憶と注意を評価するためにWMS-Rから数唱課題を用いた。WAIS-Rの積み木課題は構成能力を見るために行った。
・アウトカム指標(12週後に評価したもの)
精神症状についてPANSS、認知機能検査、錐体外路症状についてExtrapyramidal Symptoms Rating Scale (ESRS)
・統計分析
PANSSについて、評価時点と群間についての2要因反復測定分散分析を行った。認知機能検査についてはt検定を行った。ベースライン・オンダンセトロン付加群、ベースライン・プラセボ群、エンドポイント・オンダンセトロン群、エンドポイント・プラセボ群との間での比較を行った。人口統計学的指標と副作用の頻度については、フィッシャーの正確確率検定を行った。全ての検定は両側検定であり、有意水準は5%とした。

結果
・陽性症状:ベースライン時、12週後のそれぞれの時点ではオンダンセトロン群とプラセボ群で差は無かった。それぞれの群で計測時点間での有意な変化は無かった。
・陰性症状:ベースライン時では2群では有意差は無かった。オンダンセトロン群はベースライン時よりもエンドポイント時では有意差があり、症状が改善した。エンドポイント時ではオンダンセトロン群はプラセボ群よりも有意に症状が改善していた。
・総合精神病理尺度:ベースライン時では2群では有意差は無かった。オンダンセトロン群はベースライン時よりもエンドポイント時では有意差があり、症状が改善した。エンドポイント時ではオンダンセトロン群はプラセボ群よりも有意に症状が改善していた。
・PANSS総合得点:ベースライン時では2群では有意差は無かった。オンダンセトロン群はベースライン時よりもエンドポイント時では有意差があり、症状が改善した。エンドポイント時ではオンダンセトロン群はプラセボ群よりも有意に症状が改善していた。
・認知機能検査:ベースライン時では2群では有意差は無かった。エンドポイント時では、オンダンセトロン群はプラセボ群よりも、視覚性再生、視覚性対連合、図形の記憶で成績が改善していた。
・その他:HAM-Dによるうつ病の重傷度は群間差、評価ポイント間の差は無かった。ESRSによる錐体外路症状はプラセボ群においてエンドポイント時で悪化していた。

考察
幾つかの先行研究で5HT3アンタゴニストが統合失調症の精神症状・認知機能床以外を改善させることが示されていたが、ダブルブラインドによるオンダンセトロンの付加療法を行った本研究でも、陰性症状や認知機能障害(特に記憶)が改善することが示された。
また、オンダンセトロン内服群では錐体外路症状が軽減しており、忍容性が高いことが示された。
ヒトにおいて5HT3受容体は前頭前野、側坐核、海馬体、扁桃体に多いので、5HT3受容体は意欲・動機付け、情動を調節する機能がある。
リスペリドンは他の抗精神病薬よりも5HT3受容体結合能が高い。リスペリドンは5HT3受容体に関して、シナプスのポスト側の受容体に作用し、オンダンセトロンはプレ側の受容体に作用する点で影響が異なる。この違いはリスペリドンのほうがオンダンセトロンよりも受容体への親和性が低いことが寄与する。オンダンセトロンは5HT3受容体阻害作用を増強するといえる。

という研究。
これは非常に重要な論文であると思う。
統合失調症の陰性症状、認知機能障害を付加療法(add on)として改善させようという試みはいろいろあるが、5HT3受容体は非常に有力な標的であると思われる。

もともとオンダンセトロン(商品名ゾフラン)は化学療法を受けているがん患者の制吐剤として使われる薬剤である。
その他に5HT3アンタゴニストの塩酸ラモセトロン(商品名イリボー)はアステラス製薬が出しているIBS(過敏性腸症候群)の男性患者に適応のある薬剤である。
末梢においては腸に5HT3受容体が多く、その阻害作用は蠕動運動を抑制するので制吐剤として用いられるのであるが、複数の統合失調症を対象とした臨床研究で認知機能障害や、統合失調症で割と特異的な所見が出てくる聴覚誘発電位のP50成分の異常が改善することが知られており、これはとても末梢の腸に対する作用では説明できない。
これらの薬剤は脳内移行が低いので、人においては脳に局所注入できる動物の行動薬理研究の知見は適用できないと思われているが、腸の機能性疾患ではない統合失調症において陰性症状、認知機能障害、知覚過敏の問題が改善するというのはやはり内服によってであっても、脳内に移行し特に5HT3受容体が多くある辺縁系において作用していると言える。

そもそも制吐剤としての作用は脳腸相関の末梢側の方を調整するということになっているが、もしかすると脳側に作用している可能性もある。
脳腸相関の一般的説明では、ストレッサーによるストレス体験が交感神経系を通して腸でのアウエルバッハ叢でのセロトニン分泌を促進して、腸の蠕動運動を促進して腸由来の不快な内臓感覚が経験されるというものである。
しかし腸の感覚経験は中枢神経系の島皮質がコード化している。島皮質は意識的な注意に関わる前部帯状皮質や不快情動生成に関わる扁桃体との神経結合が強い。もしかすると、IBS患者や身体表現性障害のある気分障害、不安障害患者では、慢性的・持続的な島皮質、扁桃体、前部帯状皮質などを中心とする機能的結合の増強のようなものがあって、内臓感覚の閾値の低下(内受容感覚全般による身体感覚一般とでもいうものだろう)があって、末梢から通常の信号が上行してきても過敏に処理されるのかもしれない。
他方で、特性不安といった比較的長期間維持される不安状態は海馬が関与するので、こうした不快情動関連処理、内受容感覚過敏処理に関わる機能的結合に、時間的に長期的に保持するシステムとして海馬の関与があってこうした状態像を形成するかもしれない。
こう考えると、5HT3受容体は辺縁系に多いわけであるが、5HT3受容体アンタゴニストが脳内に移行し上記の機能結合に調節的に作用することで感覚過敏と不安を減弱するという意味での抗不安作用として説明できるかもしれない。例えば、海馬におけるアセチルコリン作動性ニューロンに分布する5HT3受容体の刺激は抑制性に作用するが、5HT3アンタゴニストによってアセチルコリン作動ニューロンを脱抑制して海馬機能の向上に寄与する。

個人的には、統合失調症の外受容性刺激に対する感覚過敏とIBSなどの内受容性の感覚過敏のメカニズムの異同と薬理学的介入の可能性について考えていきたい。
toyomaki
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2010年7月 8日 (木)

原因帰属の主体を示す閾下プライミングによって行為に対する自己帰属感が調節される

Effects of subliminal priming of self and God on self-attribution of authorship for events
Ap Dijksterhuis, Jesse Preston, Daniel M. Wegner, Henk Aarts
Journal of Experimental Social Psychology 44 (2008) 2-9

アブストラクト
行動に先立って行動が帰属する主体について注意向けさせるよう、主体の情報を閾下でプライミング刺激を呈示した実験を3つ行った。被験者は語彙判断課題を行ってコンピュータが刺激を消す前になるべく早く反応することが求められた。閾下プライミング呈示後のその後の行動について、自分が勝ったかどうかの帰属感を答えさせたところ、閾下プライミング刺激が1人称を示す言葉が呈示された場合は自分に帰属するという回答が多かった。コンピュータと呈示された場合は帰属感が低下していた。さらに、帰属感が超自然的なものである「神」の場合にどうなるか検討したところ信仰のある被験者では、神というプライミング後では自己への帰属感が低下し、信仰の無い者ではこの効果は見られなかった。

序論

原因帰属causal attribution、feeling of authorshipは、事象に対して自分の行為によるものだという関与性や帰属感を感じる処理である
先行研究では以下のようなことが分かってきた
・自己に注意を向けている者は関与度が曖昧な事象を自己に帰属する傾向があるが、不快な事象についてはそうではない
・行動の自己帰属について、明確な身体感覚を伴わなない場合は帰属に役に立つ情報を元に帰属を行う
・社会的存在(自己、他者、社会)に注意を向けている時は、その主体に原因帰属、責任帰属しようという意識が生じやすい
・演劇について考えると、演技者は自分の行為を自己由来だと思うのは状況に注意を向けているからであり、観劇者が演技されている行為を演技者由来と思うのは演技者に注意を向けているからである
・原因帰属は潜在的なプライミングが意識的処理に影響した結果である
・原因を自己に帰属する過程はプライミングによって誘導される潜在的な原因帰属処理システムが駆動した結果である
・自分が行った行為を自分以外の主体に原因帰属するというのは文化的現象としてよく見られる。例えば創造的な洞察やアイデアが生起するとき「霊感を得る」というように超自然的な主体から由来すると考えることがある。あるいは別の例として、子供たちはしばしば事象を想像的な主体(サンタや歯の妖精)に帰属したり想像上の友人がいたりする
・統合失調症では、行為や思考、自分の声を想像上の主体に帰属することがある
・人間は一度も見たことない存在に事象を原因帰属する傾向がありこのような神格化・擬人化は宗教的信念の起源となる
・人間は上記のように自分以外の存在に主体を感じる傾向が高いのでそのために、あまりよく知らない事象や対象に対して潜在的な危険、友情、支援者の可能性を素早く見つけることに優れている
・「意図を持った外的主体」と「宗教的観念」を連合する能力は霊、魂や神といったものを生みだし物理的に見えない主体との交流する能力(のような確信)をもたらす
・人はライフイベントを「意図を持った何かの力」のせいであると考える傾向がある。例えば「この苦しみは神の試練である」などといったように
・神は存在すると受け入れる余地がある者は非宗教的なものにも宗教的なものに事象を原因帰属でき、認知的に幅が広い傾向がある
・快事象は神に、不快事象はそうではないという傾向が示されている
・神についてよく考える者(信仰のある者)は自分の行為を外的な主体に帰属しやすい

目的:原因帰属の主体について示した刺激を閾下プライミング刺激として呈示して、その後の行為の原因帰属処理に影響するかを検討する。自分やコンピュータ、神といった実在するものから、非実在のものを呈示し、神については信仰のある者で、自己帰属の低下が起こるかどうか検討した。

方法

3つの実験を行った。
第1実験は自己帰属の促進効果、第2実験はコンピュータへの帰属促進による自己帰属感の低下、第3実験は神を信じる被験者において神への帰属促進による自己帰属感の低下の有無を検討した。
第1実験は、プライム刺激を一人称の言葉(ドイツ語でIch、とかmir)の場合とそれ以外の言葉(de)を用いた。プライミング刺激は刺激前後で「XXXXX」刺激でマスクした。その後の標的刺激は非語が実在語が呈示され、それぞれ非語、実在語の判定をボタン押しで反応させた。単語は400~700msの間で消去される。被験者にはコンピュータが刺激を消すので、それよりも早く判定して反応するようにと教示し、コンピュータとの対戦を意識させた。
第2実験、第3実験も若干手続きが異なるが基本は同じである。第2実験のプライム刺激は「computer」と「Broccoli」と「xxxxxx」を用い、第3実験では「God」と「de」を用いた。
標的刺激としての語彙判定課題について、試行の最後で自分が勝ったと思うかどうかについて6件法の内省報告を全ての試行で行った。

結果
3実験とも語彙判定課題のRT(反応時間)はプライム間で差は無かった。自己帰属感について第1実験では、一人称の言葉がプライム刺激であった条件で、有意に自己への帰属感が高かった。第2実験ではコンピュータがプライム刺激であった条件で自己への帰属感が低下していた。第3実験では神を信じる被験者では神がプライム刺激であった条件で自己帰属感が低下し、信じない被験者では神とそれ以外の言葉をプライム刺激とした条件では自己帰属感に差は見られなかった。

考察
主体を示す閾下プライミング課題で、自己帰属感が影響されることが示された。
(以下省略)

という研究。
大変興味深い研究であると思った。
標的刺激について明確なフィードバックを与えないので、刺激が消去される前に反応できたかどうかを曖昧にすることで帰属感の不明瞭さの余地を与えて、プライム刺激の影響を出やすいようにしたのは秀逸だと思う(もちろん、他にも良い課題はあるだろうと思う)。
帰属理論に関して序論で手厚く先行研究や教科書を紹介されていてとても勉強になった。
神といった見たことが無い存在への原因帰属をも可能にしてしまう認知的基盤を持つのは、ストレスマネジメントを志向する進化心理学的な目的にそった産物なんだろうと思う。どうにもならない自然現象による災害や不利益を神に原因帰属することで絶望や悲哀に対処する効果がもたらされたのだろう。

それと自分としては神経科学的基盤に興味あるが、閾下プライミング課題で主観的評定に影響する程の効果があるので、事象関連電位や機能画像に組み入れやすいと思った。
例えば、原因帰属を自己や他者、神といったものにまで制御する領域として前部島皮質が挙げられるだろう。また前部島皮質も関与するDefault mode network(DMN)は課題を行っていない安静時において自己意識の生成に寄与すると考えられているが、本研究に関して考えるとDMNが潜在的に自己に対する持続的な注意を配分しており、それゆえ思考や内言などの自己由来の活動は確実に自己由来と帰属することが出来、外的事象についてもポジティブな内容であれば自己帰属感を高め、そうでない場合は低下させるという認知バイアスを誘導するのだろう。
統合失調症ではまだ精読していないが幻聴出現時に右島皮質の過活動があるという報告があり、もしかすると本当は自分が生じさせた内言、構音表象に対して自己由来の原因帰属が障害されて(誤帰属)、他者や非実在的なな存在にover attribution(過剰帰属)してしまうのではないか。
不安障害やうつ病などで、DMNの結合性が高いという報告があるが、健常者が適応的な目的で不快な事象に対して自己帰属感を低下させてストレスに対処するという認知バイアスが駆動するか、患者さんでは強い自己帰属処理のために不快事象を正面から捉えてしまってストレス反応に打ちひしがれてしまっているのかもしれない。
自閉症についても島皮質が関与する身体モニタリングの異常と自己意識、社会性の障害を論じた興味深い論文があるが、それは今度紹介するとして、本質的には過剰な自己帰属感による共感性処理への余地の少なさがあるのかもしれない。

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2010年5月24日 (月)

成人の発達性ディスレクシア者では音声の高速変化処理能力が低下している

Auditory stream segregation in dyslexic adults
P. Helenius, K. Uutela and R. Hari
Brain (1999), 122, 907-913

発達性ディスレクシアは学習障害の読字障害、あるいは読字障害と書字表出障害が合併した学習障害の1つの臨床型である。脳損傷による後天的な失読症と分けるために「発達性」をつけることが多い。知的障害や他の発達障害が無く、純粋な認知機能の発達の障害といえる。
遺伝性の障害で頻度は、診断の定義はそれぞれの言語の音素と書記素との対応関係の特性によるが数%から10%の間である。日本では仮名文字と読み方が1対1対応するため、ディスレクシアの存在が目立たないが実は有病率は非常に多い障害である。

今回精読した論文は発達性ディスレクシアの基本障害のうち、有力なものとして音韻処理障害が挙げられるが、それの背景にある認知処理を心理物理課題で通常発達者と発達性ディスレクシアで検討したという研究である。

論文の概要
①目的
発達性ディスレクシアでは音韻意識の障害が見られる。これは文字刺激に対してその読み方が円滑に正しく想起されないために、意味理解が不良になり発声も円滑にいかなくなることである。文字刺激に対応する音韻表象が角回といった頭頂葉下部の領域でうまく生成されないことが機能画像の研究などで知られている。
音韻意識の障害について、様々な下位プロセスの障害が報告されているが、本検討は音韻表象のもっと基礎の聴覚処理について、時間分解能を評価する検討を行っている。音声刺激が高速に変化する時に音声認知が「変化して聞こえる」、という経験から恒常性のバイアスが働いて「変化しないように聞こえる」と認知が変化していくその刺激変化の時間間隔を評価している。こうした聴知覚の高時間分解能処理は言語音の知覚の基礎にある子音から母音へ変化していく、フォルマント遷移の知覚の基礎にあると考えられる。時間分解能が低いと正確な言語音知覚(符号化)が困難になり、音韻表象の成立が困難になると考えられる。

②本論文で引用されていて、自分がメモした先行研究
ディスレクシアは100Hzと305Hzの75msの音が400msのISIで呈示されたときに異同の弁別、音の入れ替わりの知覚が困難である
連続呈示される音の弁別が困難である
Previous  studies  have  indicated  that  dyslexic  children have no dif?culties in detecting auditory stimuli which are presented in isolation or separated by a gap exceeding 400 ms (Tallal,  1980).  However,  when  two  75-ms  tones  (100  and 305  Hz)  were  presented  in  rapid  succession,  the  dyslexic children made a large number of errors both in the same? different identi?cation task (Tallal, 1980) and in judging the temporal order of the sounds (Tallal, 1980; Reed, 1989).
Tallal   P.   Auditory   temporal   perception,   phonics,   and   reading disabilities in children. Brain Lang 1980; 9: 182?98.

成人のディスレクシアでも純音や周波数を操作した音刺激系列の弁別が困難である
Impaired discrimination of sounds has also been demonstrated in adult dyslexics  using  pure  tones  (McAnally  and  Stein,  1996) and frequency-modulated tones, the identi?cation of which necessarily  requires  sensitivity  to  temporal  cues  (Witton et al., 1998).
McAnally KI, Stein JF. Auditory temporal coding in dyslexia. Proc R Soc Lond B Biol Sci 1996; 263: 961?5.
Witton  C,  Talcott  JB,  Hansen  PC,  Richardson  AJ,  Grif?ths  TD, Rees A, et al. Sensitivity to dynamic auditory and visual stimuli predicts  nonword  reading  ability  in  both  dyslexic  and  normal readers. Curr Biol 1998; 8: 791?7.

一般に高速呈示される聴覚刺激は、前後に呈示される刺激の知覚に影響を与える
As rapidly presented sounds clearly affect the perception of  previous  and  following  sounds  (Bregman,  1990,  1993),
Bregman AS. Auditory scene analysis: the perceptual organization of sounds. Cambridge (MA): MIT Press; 1990.
Bregman   AS.   Auditory   scene   analysis:   hearing   in   complex environments.  In:  McAdams  S,  Bigand  E,  editors.  Thinking  in sound:   the   cognitive   psychology   of   human   audition.   Oxford: Clarendon Press; 1993. p. 10?36.

ディスレクシアでは高速呈示される刺激が遅くても弁別困難である
the impairment of auditory processing in dyslexic children should be even more clear with sound sequences instead of tone pairs. Accordingly, dyslexic children make more errorsthan  control  children  in  matching  sequences  composed  of three to ?ve elements; however, the impairment seems to be present  even  at  relatively  slow  presentation  rates  (Bryden, 1972; McGivern et al., 1991).

連続呈示される聴覚刺激の分離/連続性の知覚は、刺激間の周波数の隔たり、刺激間感覚で決まる
Auditory stream segregation is a phenomenon that can occur with sound sequences consisting of alternating high-and  low-pitch  tones.  The  percept  depends  on  both  the frequency and time separation between the successive tones (van Noorden, 1975):  when the frequency separation between tones  is  small  or  when  the  presentation  rate  is  slow,  the subjects report a connected series of tones (Fig. 1A). However, increasing the frequency separation or presentation rate results in a percept of two separate sound streams, one with higher and the other with lower pitch (Fig. 1B). The threshold of hearing  sound  streams  as  separate  is  called  the  ?ssion boundary,  and  it  is  only  slightly  in?uenced  by  the  rate  of presentation.  However,  if  the  tones  are  separated  by  an interval  of  less  than  about  5  semitones  they  cannot  be segregated  into  higher  or  lower  streams.  The  threshold  of single-stream percept, the temporal coherence boundary, is strongly in?uenced by both the frequency and the presentation rate of the stimulus. Between these two boundaries, either percept  can  occur  according  to  the  attentional  set  of  the subject (van Noorden, 1975).
van  Noorden  LPAS.  Temporal  coherence  in  the  perception  of tone  sequences  [dissertation].  Eindhoven:  Institute  for  Perception Research, Eindhoven University of Technology; 1975.

連続聴覚刺激の弁別能(Auditory stream segregation)は同じ音源から来る音声は急には変化しないだろうと感じさせるバイアスを生む
例えば、高速呈示された2つの音系列について、周波数が十分はなれていると、それぞれ異なる音源から由来すると感じられる。この場合は周波数に対する分離が行われる。
Auditory stream segregation can be interpreted to re?ect the  auditory  system’s  tendency  to  assume  that  a  sound sequence coming from the same source does not change its properties abruptly (Bregman, 1990, 1993). Thus, with rapid presentation rates, alternating tones with adequate frequency separation are interpreted as separate sound streams arising from  distinct  sound  sources.  Segregation  has  an  adverse effect  on  the  perception  of  the  temporal  order  of  sounds (Warren   et   al.,   1969;   Bregman   and   Campbell,   1971).
Bregman AS. Auditory scene analysis: the perceptual organization of sounds. Cambridge (MA): MIT Press; 1990.
Bregman   AS.   Auditory   scene   analysis:   hearing   in   complex environments.  In:  McAdams  S,  Bigand  E,  editors.  Thinking  in sound:   the   cognitive   psychology   of   human   audition.   Oxford: Clarendon Press; 1993. p. 10?36.

言語音に対する連続聴覚刺激の弁別能(Auditory stream segregation)は音素の時系列的推移の正確な知覚の妨げになると思われるが、実際は分析的ではなくもっと大きな単位で解釈しているだろう
豊巻補足:前半の話は、音素は時間的に変化していくが、弁別能(Auditory stream segregation)は同じ音源の音を同じ物理特性の音として感じさせるバイアスがあるので、それゆえ正確な分析が難しくなるということを指すだろう。
Accordingly,   auditory   stream   segregation   occurring   for segments of speech sounds prevents the accurate perception of  the  temporal  order  of  phoneme  segments  (Lackner  and Goldstein, 1974; Dorman et al., 1975).
Lackner JR, Goldstein LM. Primary auditory stream segregation of repeated  consonant?vowel  sequences  [letter].  J  Acoust  Soc  Am 1974; 56: 1651?2.
Dorman MF, Cutting JE, Raphael LJ. Perception of temporal order in  vowel  sequences  with  and  without  formant  transitions.  J  Exp Psychol Hum Percept Perform 1975; 104: 121?9.

一般の言語音知覚は分析的ではなく、大きな単位で推測的に知覚されるのでフォルマント遷移も高速で呈示されても通常に知覚される
Even more importantly,  formant  transitions  effectively  bind  together phonetic segments  so that  the temporal order  of speech  is normally preserved even at rapid presentation rates (Dorman et al., 1975)
Dorman MF, Cutting JE, Raphael LJ. Perception of temporal order in  vowel  sequences  with  and  without  formant  transitions.  J  Exp Psychol Hum Percept Perform 1975; 104: 121?9.

フォルマント遷移は子音停止時に生じるが、ディスレクシアではこれの知覚が弱い
Formant transitions are present in, for example, stop consonants, the detection of which is impaired in dyslexic children (Reed, 1989).
Reed MA. Speech perception and the discrimination of brief auditory cues in reading disabled children. J Exp Child Psychol 1989; 48: 270?92.

ディスレクシアではない言語学習の障害のある子供では集中学習で能力が向上する
recent studies have indicated that speech perception de?cits of language learning-disabled children can be improved by intensive training (Merzenich et al., 1996; Tallal et al., 1996), it is of great importance to gain further knowledge of the nature of the perceptual de?cit underlying developmental dyslexia.
Merzenich MM, Jenkins WM, Johnston P, Schreiner C, Miller SL, Tallal P. Temporal processing de?cits of language-learning impaired children  ameliorated  by  training  [see  comments].  Science  1996; 271: 77?81. Comment in: Science 1996; 271: 27?8.
Tallal P, Miller SL, Bedi G, Byma G, Wang X, Nagarajan SS, et al. Language  comprehension  in  language-learning  impaired  children improved with acoustically modi?ed speech [see comments]. Science 1996; 271: 81?4. Comment in: Science 1996; 271: 27?8.

③方法
13人の発達性ディスレクシアのある成人(平均年齢:30.1歳)、18人の健常成人(平均年齢:26.3歳)を対象とした。
行動課題として、読み速度、ワーキングメモリのスパンなどを評価したが、いずれもディスレクシア群で低下していた。読み速度は年齢と教育機関が一致する健常者群よりも1標準偏差も下回ったことから、読む機会が同等にあっても成人以降も読み困難が存在し続けていると言える。

stream segregation task
1000Hzと400Hzの純音が交互に呈示された。それぞれの刺激の持続時間は49ms、エンベロープは立ち上がり、立ち下がり24msであった。刺激は1つの系列は6秒間で、ヘッドホンで両耳に呈示された。音圧は80dBであった。
2つの周波数の刺激の立ち上がり感覚(SOA)を操作した。SOAは50~800msであった。
被験者への教示は、2つの周波数の音声刺激が交互に鳴っているように感じられる(connected)か、それぞれの周波数の音が連続して鳴っていて、交互に鳴っているという感じがしない(segregated)かを判断してもらい、それぞれに対応する側のマウスのボタンを押させた。被験者の評価は音刺激を聞いた後に評価してもらう。タイムプレッシャーは与えなかった。SOAを変えて、被験者の「交互(connected)」か「分離(segregated)」に評価する頻度を記録した。
最初の刺激はSOA 600msから開始して、「交互」であると判断すると次試行でSOAを長くした。そのようにして判断が半々になる、つまり「交互」と「分離」が区別できない閾値のSOAを算出した(これをcoherence boundaryと呼んでいる)。
全部で30試行行ったが、SOAの変更は最初の10試行は40ms間隔とし、次の20試行は20ms、最後の10試行は10msすつとした。最後の10試行のSOAの平均値を閾値とした。それを一人一人算出して、t検定で群比較した。

④結果・考察
閾値(coherence boundary)は、ディスレクシア群は208msで、健常者群が127msで、有意差が見られた。つまり健常者のほうが「交互」と「分離」が区別出来なくなるSOAの間隔が短いということで、高速に変化する聴覚刺激の弁別・同定の時間解像度は健常者で高く、ディスレクシア者では低いという結果であった。
 音声の高速変化処理能力の閾値と他の読みスキルと、ワーキングメモリなどの行動指標との相関を検討すると、健常者群ではいずれの指標と相関が見られなかったが、ディスレクシア群では呼称速度と高い相関が見られた(r=0.72)。
読みスキルと音声の高速変化処理能力の関係は完全に1対1対応ではなく、読みスキルが正常の範囲であれば相関は見られない。おそらく通常の読み能力に寄与する能力、機能は複数あり、正常の読み能力は音声の高速変化処理能力の寄与は小さいが、読み困難な症例では音声の高速変化処理能力が中核的に寄与するのでこれらが相関してくるのだろう。
ディスレクシア者で音声の高速変化処理能力が低下するという本検討の結果は同グループの別の聴覚課題を用いた検討を支持するものであった。
これらの一連の研究で示された多くのディスレクシア者で見られるこうした音声の高速変化処理能力の低下は、time window  of  perceptual  integrationが広いと解釈することが出来る(2つの異なる音素が順番に呈示された場合に順に知覚するのに要する時間)。これが広いとフォルマント遷移があるような言語音の刺激に対して時系列的な変化を正確に捉えることが困難になってしまう。
また相関があった呼称速度だが、非語の場合だともう少し相関が高かった。読みの2重経路モデル(書記素を音韻表象に変換する経路と、慣れ親しんだ語の場合は音韻変換せず意味処理へ到達する経路)について、ディスレクシア者は知っている単語は後者の自動的な過程で読みたがるが、非語なので書記素を音韻に変化する過程で読まなければいけない。非語と相関が高かったことから、音声の高速変化処理能力は書記素を音韻表象に変換する際の音韻表象処理に関与するかもしれない。

という研究
2008年4月から2010年3月まで、発達性ディスレクシアの研究をしていたので慣れ親しんでいたが、もっと早くこの論文のテーマを知って検査に取り入れたかったと思った。
この音声の高速変化処理能力は大細胞系聴知覚の特性を反映する可能性があり、この課題の成績と別の何らかの神経生理指標との対応を見ることが強く望まれる。
発達性ディスレクシアでは大細胞系視知覚の知見、障害仮説が多く言われていて、確かに死後脳の病理知見でも視神経の大細胞が層をなしている視床の外側膝状体の体積を量ると、それがかなり減衰しているという所見もある。同様に聴神経も大細胞と小細胞があり、内側膝状体で層を構成しており、やはり大細胞層の体積が減少している知見が報告されている。しかし聴覚のほうの大細胞系の知覚の特性については全く報告が無い。本論文で連名のHari先生は別の論文で大細胞系聴知覚は音声の高速変化処理に寄与すると述べているが、この課題の神経生理学的対応を検討した研究は無いのでぜひ通常発達者とディスレクシア者で検討できないか考えたい。

また、こうした心理物理課題をもっと精神疾患や発達障害に応用することが望まれると思う。
理由としては
①課題遂行に関して、戦略があまり無い
②課題に対する動機付けに影響を受けない
③臨床像のかなり基礎にある機能を評価しているので成績の評価について交絡要因があまりない
などがあると思う。
成人のアスペルガー障害の方や一部の発達障害の子供たちは課題に対する動機付けがすごく高かったりして成績を向上させる戦略をあれこれ考えようとすることがあるので、①と②によって成績が変動するような課題は臨床研究には不向きだ。
③のような臨床像を直接評価するような課題を患者さん発達障害を持つ方に行うときには、その課題が本来評価している機能が低下しているかどうかよく見極める必要がある。例えば発達性ディスレクシア者を対象として読み障害を直接見るような音韻表象をあれこれ操作してもらう課題(例:スプーナリズム課題、しりとり課題、音節削除課題)は、確かに音韻意識を評価出来るが、しかし発達性ディスレクシアでは言語性ワーキングメモリも低下しているので、それによって課題成績が低下している可能性も非常に大きい。そもそもの目的によるかもしれないが、症状評価の代用としてこうしたレベルの課題を行うのであれば全く問題無いが病態論に関心がある場合は、結果の解釈で交絡要因が少ない課題を選ぶべきでそうなるともっと還元論的な、基礎過程に注目した課題を使用することが望まれる。

toyomaki

2010年1月 3日 (日)

3種類の注意処理はそれぞれ異なるEEGの律動が寄与する

最新の文献(ここ1年以内)ではありませんが、自分が興味を持った内容の論文、高いインパクトファクターの雑誌の論文、テーマや研究手法・分析法が興味深い論文などを精読して紹介しようと思います。

The Journal of Neuroscience, June 6, 2007 . 27(23):6197. 6206-6197
The Relation of Brain Oscillations to Attentional Networks
Jin Fan, Jennie Byrne, Michael S. Worden, Kevin G. Guise, Bruce D. McCandliss, John Fossella, and
Michael I. Posner

Posnerによると注意機能は3種類に分けられる。
①警告状態(Alerting netwaork):安静状態から特定の認知処理を円滑に行える状態を生成・維持するような一般的な注意
②注意の定位(Orienting network):特定の刺激に対する処理を促進するような状態を生成する選択的注意
③実行的制御(Executive control network):目標達成のために刺激に対する反応を適切に選択する。反応葛藤・反応抑制の解決。
これらの注意処理に関わる神経基盤は機能画像をもちいた先行研究でそれぞれ異なることが示されたが、本検討はこれらの神経基盤をアプリオリな条件として逆問題を解いてそれぞれの神経基盤から由来するEEGの時間周波数解析を行ってそれぞれの帯域の律動の様相の違いを比較した。

これら3つの注意処理を駆動させるためにANT(Atentional Netwaork Test)という課題を用いた。
これはフランカー課題に各種Cue(手がかり刺激)を操作した課題である。具体的には①Cue無し、②中央Cue、③空間的Cueがある。
①はCueが無いので、どの空間(上方か下方か)に反応が求められる標的刺激が出現するか分からない。
②は中央にCueが出るが、標的刺激が上方か下方のいずれに出現するかを意味しない。単純に標的刺激の出現に対する構え、警告状態を駆動するだけである
③標的刺激が出現される側に呈示されるので、標的刺激に対する具体的な選択的注意を駆動させる。
そして、標的刺激が呈示されるが、それぞれ矢印が5つ並んだ刺激であるが、2種類ある。a.一致刺激(congruent)、b.不一致刺激(incongruent)がある。
a.は中央と両側それぞれ2つが皆同じ方向を向いており、反応が容易である(例、「→→→→→」この場合は右のボタンを押す)
b.は中央と両側それぞれ2つが異なる方向を向いており、反応に葛藤が生じやすい(例、「→→←→→」この場合は左のボタンを押す)
b.の場合において妨害刺激によって間違った反応が優勢反応になるがそれを抑制しないといけない。この場合に実行的制御が駆動し正反応へと修正されて実行される。
ということで、それぞれ
①警告状態の神経活動の評価は 中央Cue から Cue無し を引き算した神経活動
②注意の定位は 空間的Cue から 中央Cue を引き算したもの
③実行的制御は 不一致刺激 から 一致刺激 を引き算したもの
で評価される
ちなみに③の場合は、標的刺激呈示時と反応遂行時の2種類のタイミングがある

分析は非常に興味深い。脳波の事象関連電位と時間周波数解析を行っているが、非常に高度な解析を行っていて参考になる。
先行研究(2005年同著者ら)で行ったANT遂行時のfMRIの分析の結果から関心領域を決めてそのクラスターを用いてダイポール推定を行った。ダイポールはfMRIの分析の結果、それぞれの条件で有意な活動のあったクラスターの重心(the geometric center of mass of each cortically located region of activation as identified in the fMRI data.)に局在化された。
ダイポールについては脳波は神経細胞が並行に配列してコラム(皮質コラム)を形成していないと頭皮上に「漏れ」てこないので、fMRIで差が見られた視床や小脳などのクラスターは除外して分析している。
著者も書いているように、ダイポールは加算平均波形を使って計算したが、目的は加算平均波形の様相ではなく、律動を見ることで、その起源となる部位のEEG(source waveformの)の律動、特にガンマ帯域の律動は加算平均波形の神経活動(遅い帯域のevokedあるいはinducedな律動)とは必ずしも同じ起源を有するとは限らないからこのやり方でよいかはchallenge(難しいところがあるかもしれない)だが、頭皮上でのEEGを用いた分析よりも優れているだろうと言っている。

結果は
①Alerting netwaork
説明率が高いダイポールは5つの領域に推定された。
左下前頭回を除くsourceについて4-30Hzの帯域について200-450msの間で低下していた。右上側頭回と左下前頭回でシータ律動が増大。ガンマ帯域は右上側頭回を中心に他の領域で低下していた。
②Orienting network
説明率が高いダイポールは8つの領域に推定された。
ガンマ律動は両側の紡錘状回、右上側頭回、右中心前回などで増大していた。左上前頭回では30Hz以下の律動と60-80Hzのガンマ律動が見られた。
③Executive control network
刺激呈示時と反応前後の2つの区間とcongruentとincongruentの2つの反応難易度の種類がある。
刺激呈示時(congruentとincongruentともに):ガンマ律動の増大は左上前頭回、右下前頭回、左下前頭回、左紡錘状回で増大していた。30Hz以下の帯域は低下していた。
コンフリクト効果=実行的制御のソースが増大する状況:incongruentからcongruentとの引き算ではガンマ律動の増大は右下前頭回、右中前頭回、右前部帯状皮質で見られた。

警告状態は幅広い帯域の脱同期を伴う。視床-皮質間のネットワーク(ノルアドレナリンによって調節されうる)が寄与するだろう。
選択的注意の定位は前頭-頭頂のネットワークが関与する報告があるが、紡錘状回も関与する先行研究があり、ガンマ律動が空間的Cueの呈示によって増大した本検討はそれを支持するだろう。
実行的制御はincongruuentの標的刺激呈示後あらゆる帯域の律動の増大をもたらす。前部帯状皮質は選択的注意、実行的制御に関わるが本検討もそれを支持するだろう。
反応遂行前後律動は大きく変化するが、選択的注意によるガンマ律動が反応遂行後に減衰しシータ律動が出現していくが文脈更新(他に誤答などのモニタリング)などを反映するだろう。

といった研究。
思ったより精読に時間がかかり、詳しく記述するのも大変だったのかなり端折った紹介ですが、JNS(Journal of Neuroscience)だけある内容の深い研究だと思った。1つの課題で3つ(標的刺激の刺激呈示と反応遂行時を考えると4つ)のタイミングで分析し、加算平均波形から時間周波数解析まで行っている。
また頭皮上のEEGではなく先行研究のfMRIで得られた活動部位を制限条件としてダイポールを推定して、その領域でのsource waveformを用いて解析を行っている。このやり方は著者が優れた方法だと言っているが、確かに不良設定問題である逆問題をこのような制約条件を付加するのは重要だとよく言われているのでおもしろいと思った。
また時間周波数解析では関心領域(特定の時間の特定の周波数帯域しか見ない)みたいなものをおかず、fMRIのRandom field theoryみたいな考え方で個人のスペクトログラムにガウシアンで平滑化し、その後、条件間のt検定で多重比較の問題のためにp値の補正をする、のではなくp値(0.01)をそのまま採用するためにモンテカルロシミュレーションを行って補正した場合と同等の危険率で有意差のあったクラスター(この場合は時間×周波数によるピクセル)を求めている。このやり方は時間周波数解析をやっている論文では少数の側にあると思うがこの方が良いと思った。自分の研究でもこのやり方に準拠して進めたいと思った。逆に関心領域みたいのをおいてそこしか分析してなくて、それで有意差がありました、という方がもしかすると本当は仮説が無くて総当たりで検定して差が見られたのでストーリーを無理矢理作ってあたかも最初からそこに関心があったという感じがするので、誰もが納得できるストーリーが無ければ一律このような解析をすべきだろう。

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