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2011年3月27日 (日)

抗うつ薬のミルタザピンの付加療法は統合失調症の認知機能障害を改善させる

More evidence on proneurocognitive effects of add-on mirtazapine in schizophrenia.
Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2011 Mar 17.
Stenberg JH, Terevnikov V, Joffe M, Tiihonen J, Tchoukhine E, Burkin M, Joffe G.

アブストラクト全訳
統合失調症の治療において神経認知機能を改善させることは重要である。我々が以前に行った治療抵抗性統合失調症患者を対象とした抗うつ薬のミルタザピンを定型抗精神病薬に付加して6週間観察する無作為割り付け研究では、陰性症状だけでなく、陽性症状、認知機能障害も改善した。今回の研究はミルタザピンをもっと長期に付加するとより神経認知機能障害が改善するかどうかを検討することである。無作為に割り付けられた患者群で、オープンラベルでのミルタザピン付加療法を6週、12週投与できる患者を対象にした。結果について、6週以降の段階ではミルタザピン付加群とプラセボ投与群の双方で、複数の神経認知機能の領域の改善が見られた(豊巻注:これは認知機能検査の反復施行による練習効果)。6週まではプラセボで、それ以降はミルタザピンを付加された患者群は、最初から6週間ミルタザピンを付加された群と同程度の認知機能の改善であった(豊巻注:ベースラインと比べての改善が同程度)。さらに12週まで続けてミルタザピンを付加された群は6週まで付加された場合よりも、ストループ課題(干渉無しの条件)の遂行時間、Trail Making TestのB版の誤答数において有意な改善が見られた。ミルタザピンを抗精神病薬に持続的に付加することは、神経認知機能の障害を改善させると言える。それは長期に付加した方がより効果が現れる。ミルタザピンは統合失調症の認知機能改善薬として考えるとコストが安く、安全性の高い薬剤と言えるが、さらなる研究が必要である。

という研究。

時間があれば精読したいところだが、とりあえずアブストラクトの紹介までということですいません。
ミルタザピン(商品名リフレックス、レメロン)は四環系抗うつ薬であるが、多様な作用機序がある興味深い薬剤である。Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant:NaSSA(ナッサと発音)と呼ばれるカテゴリに入り、ノルアドレナリン、セロトニン系を促進し、短時間で効果が発現する。
神経認知は、注意、記憶、言語、処理速度、遂行機能などの情報処理的な認知処理を指す概念である。
神経認知機能がミルタザピンの付加によってさらに改善するというのは、1つは陰性症状とパラレルな状態依存的な認知機能の低下が改善した可能性と、精神症状とは独立する純粋な認知機能障害が改善した可能性が考えられる。
それでミルタザピンの改善効果は多様な可能性があるだろう。
ノルアドレナリンのα2受容体のアンタゴニストとして、ノルアドレナリンの放出を促進し、一部の認知機能を改善させる可能性。α2受容体は自己受容体と呼ばれシナプス前細胞にあり、これを抑制するとフィードバックとしてノルアドレナリンの放出が促進される。前頭葉でのノルアドレナリンの放出促進は認知機能や抑うつ、陰性症状の改善に寄与する。
セロトニン作動性ニューロンに投射するノルアドレナリン作動ニューロンにおいて、ノルアドレナリンのα2受容体のアンタゴニスト作用がセロトニン作動性ニューロンを刺激して、次に、それが投射する細胞のうち、5HT-1A受容体を持つ細胞を刺激して、抗うつ作用、抗不安作用、ひいては5HT-1A促進は前頭前野でのドパミン放出を促進するので、これによる陰性症状、認知機能障害の改善に寄与する、という可能性がある。
さらに、5HT2受容体のアンタゴニストとして、ドパミンの放出を促進し、一部の認知機能障害を改善させる可能性。腹側被蓋野から前頭前野に投射するドパミン作動性ニューロンに分布する5HT-2A受容体は抑制的に作用するが、これを薬剤によって阻害することで脱抑制が起こり、前頭前野でのドパミン放出を促進し陰性症状や認知機能障害を改善させる可能性がある。
またまたさらに、ミルタザピンは5HT-3受容体のアンタゴニスト作用がありこれが消化器症状の改善や制吐剤としての効果もあるが、このブログで以前に取り上げたように中枢神経系では抗不安作用や記憶増強作用があるので、このことが抗不安作用、認知機能改善に寄与する可能性もある。
他にも5HT-2阻害作用がGABA作動性ニューロンを抑制して、それが抑制しているノルアドレナリン作動性ニューロンを活性化するという機序もある。
ということで、ミルタザピンの多様な作用機序のおかげで、陰性症状とパラレルな認知機能障害(認知機能低下状態、あるいは発揮困難状態という言うのが正しい)と中核障害としての認知機能障害に、どの作用機序がどの程度関与するかは不明確である。
認知機能改善薬を考えるとき、特に後者の中核的な認知機能障害を改善させる薬剤というのが強く望まれるが、いずれにしてもミルタザピンはそれぞれの作用機序が認知機能障害に対して緩やかな改善効果があって、それらの総和として、認知機能検査で計られる障害が改善するくらいの効果に寄与するのだろう。

今後ミルタザピンが認知機能障害に改善効果があることを強く支持する研究としては、やはり機能画像と組み合わせて認知機能を発揮させる課題関連の前頭葉などでの神経活動が投与前後で上昇することを示すことであろう。神経伝達機能の調節作用が確かに認知機能発揮時の神経活動を調節することを示すことがとても重要である。
また、ミルタザピンが持っている5HT-1A促進作用と、5HT-3阻害作用は、他の薬剤がより純粋に持っており情動と認知機能を改善させるエビデンスが出ているので、それらと比較する試験を行うことで、ミルタザピンの臨床的な有用性がより明らかになるかもしれない。
例えば、5HT-1A促進剤のタンドスピロン(ブスピロン)の付加療法と比較する、5HT-3阻害剤(オンダンセトロンとか複数ある)の付加療法と比較するという試験が出来れば面白いだろう。

toyomaki

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