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2011年1月24日 (月)

パリペリドン徐放剤の至適用量はPETを用いたD2受容体占有率の計測から6~9mg/dayであると推定される

Dose-finding study of paliperidone ER based on striatal and extrastriatal dopamine D2 receptor occupancy in patients with schizophrenia.
Arakawa R, Ito H, Takano A, Takahashi H, Morimoto T, Sassa T, Ohta K, Kato M, Okubo Y, Suhara T.
Psychopharmacology (Berl). 2008 Apr;197(2):229-35. Epub 2007 Dec 6.

アブストラクト全訳

パリペリドン徐放剤(Paliperidone ER)は成分が徐々に放出されるように工夫された新規抗精神病薬である。全ての抗精神病薬について言えることだが、副作用をあまり起こさないためには慎重な用量設定が必要である。
本研究では統合失調症患者を対象にパリペリドン徐放剤を用いてPET計測による線条体と線条体以外の脳部位におけるD2受容体の占有率について計測し、この薬剤の最適用量を推定する。
13人の男性の統合失調症患者を対象とした。パリペリドン徐放剤を6週間、用量を固定せず投与した。6人は1日3mg、4人が9mg、3人が15mg投与された。パリペリドン徐放剤投与開始後、2週から6週の間でPET計測が行われた。計測は同日に2回行われ、1つは[11C]raclopride(ラクロプライド)を、他方は[11C]FLB 457をトレーサーに用いて撮像された。投与量とパリペリドンの血漿中濃度、PETによるD2受容体の占有率の関係を分析した。
結果は、[11C]racloprideを用いた線条体のD2受容体占有率と11C]FLB 457を用いた側頭葉皮質におけるD2受容体占有率は、それぞれ54.2~85.5%、34.5~87.3%であった。線条体、側頭葉皮質における50%有効量はそれぞれ2.38と2.84mg/dayであった。D2受容体の占有率は線条体と側頭葉皮質で有意差は見られなかった。本研究のデータからパリペリドン徐放剤は6~9mgで、D2受容体を70~80%占有することがわかり(注:一般に抗精神病薬はD2受容体を70~80%占有すると抗精神病作用があるとされる)、それは線条体と側頭葉皮質で同様であることが分かった。

注1:extended-release (ER) formulationは徐放剤のことで、成分が徐々に放出されるよう工夫された薬剤で、血中濃度が急激の上昇しないので効果の持続時間が長く、副作用が少ないことと服用回数が少なくてすむ。
注2:ED50 valuesは50%有効量のことで、薬物濃度を横軸、生体の特定の反応を縦軸に取ったときに薬物の投与量と反応の関係を示した用量-反応曲線 dose-response curveが描かれるが、最大反応の50%の反応を引き起こす薬物濃度が ED50値である。

という研究。
パリペリドン(商品名インヴェガ)は世界で最も用いられている非定型抗精神病薬の1つであるリスペリドン(商品名リスパダール)の活性代謝産物であり、リスペリドン同様の抗精神病作用がある。
本研究は放射線医学総合研究所が得意とするPETによる受容体占有率の測定により、ヒトで非侵襲的な形で新規薬剤の至適用量を推定するdose-finding研究である。
パリペリドンとリスペリドンの薬物プロフィールは実はいろいろ違っていて、臨床精神薬理13巻11号の村崎先生の記事のアブストラクトがオンラインで読めるがそこに簡単に記されている。
セロトニン/ドパミン濃度比がリスペリドン7.1に対してパリペリドン1.5と小さい
ドパミン3受容体に対する阻害作用が高い
アドレナリンα2受容体に対する阻害作用が高い
などが分かっている。
本検討では単純にD2受容体の占有率を計っているので、SDA以外の上記の特異的なプロフィールがどこにどう作用しているか不明であるが、行動課題遂行時の機能画像を用いてリスペリドンと比較すると興味深いだろう。

また本検討では線条体と側頭葉で同じ占有率であったことが興味深い。これまで統合失調症のドパミン仮説は専ら線条体の過剰な神経伝達効率で説明されているが、この研究から間接的ではあるが幻聴に関わる側頭葉のドパミン神経伝達亢進が背景にある可能性があり、なかなか興味深い。妄想・幻覚はかなり高次な認知処理の異常であり、精神薬理学の視点からは線条体を含む大脳基底核に注意が向くけれども、認知神経科学の視点からは前頭葉-側頭葉の機能的結合に注目する方が重要であると思う。
統合失調症のドパミン仮説を支持する薬理学動態の関心領域が線条体から皮質に移行することを示唆する研究がもっと出ることを期待したい。

toyomaki
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