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2010年8月 3日 (火)

NMDA受容体のアンタゴニストのケタミンは双極性うつで急性の抗うつ効果がある

A Randomized Add-on Trial of an N-methyl-D-aspartate Antagonist in Treatment-Resistant Bipolar Depression

Nancy Diazgranados et al
Arch Gen Psychiatry. 2010;67(8):793-802.

双極性うつの薬物治療に関して、治療を開始してから薬物の効果が発現するまで時間がかかることが知られている。薬物療法としてすぐ効果が発現する(例えば数時間で)ような治療戦略は患者や公衆衛生に多大なインパクトをもたらすだろう。本検討はNMDA受容体のアンタゴニストを用いて、双極性うつに対して素早い抗うつ効果が見られるかどうかを検討した。対象患者を無作為抽出し、二重盲検比較試験によって、通常治療にNMDAアンタゴニストを付加した(add-on)。2006年10月から2009年7月までの期間行った。メリーランド州のNIMHのうつ病研究ユニットで行われた。対象はDSM-Ⅳの診断を満たす双極性障害のうつ病患者18名であった。治療抵抗性であった。
患者はリチウム、もしくはバルプロ酸で治療を受けており、さらにNMDAアンタゴニストのケタミン塩酸塩(0.5 mg/kg)を2週間の間をあけた2日間で静脈注射した。プラセボ群はプラセボを同様に注射した。うつ病の評価は、MADRAS(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale)を用いて、注射後40分、80分、110分、230分、1日後、2日後、3日後、7日後、10日後、14日後に評価した。
結果は、プラセボ群と比較してケタミン注射後40分でうつ症状が有意に改善した。この改善は3日後まで続いた。ケタミン、プラセボのeffect sizeの差が最大になったのは2日後であった。被験者の71%はケタミンによってうつ症状が改善し、6%はプラセボで改善した。ケタミンを投与された1名とプラセボを投与された1名が躁転した。ケタミンの忍容性は高かったが、主な有害事象は解離性症状で投与後40分でしか見られなかった。
結論として治療抵抗性の双極性うつに対してNMDA受容体のアンタゴニストの単回の投与は頑健で高速の抗うつ効果があることが示された。

という研究。
精神医学のトップジャーナルであるArchives of General Psychiatryの論文です。
ケタミンはグルタミン酸受容体の1つであるNMDA受容体の数あるアンタゴニストの1つで、動物やヒトの麻酔として用いられているが、麻薬に指定されている薬剤でもある。
ネスラーの分子神経薬理学では乱用薬物、耽溺性薬物は脳報酬刺激(brain stimulation reward)を促進する、つまり報酬系が活性化しやすくなると記述されている。そして耽溺性薬物としてはアンフェタミン類、コカイン、オピエート類、ニコチン、フェンサイクリジン、ケタミン、カンナビノイド類、ベンゾジアゼピン類、バルビツール酸類、エタノール類などが含まれると書かれてある。このうち、ケタミンやフェンサイクリジンはNMDA受容体のアンタゴニストである。耽溺性薬物は最終的には意欲・動機付けの最も中核的な神経基盤である側坐核を活性化して多幸感や条件刺激と行動の強化を促進するということで、ケタミンも皮質などから直接側坐核に抑制的に投射するグルタミン作動性ニューロンを阻害することで、側坐核をだつ抑制して、意欲・動機付けの神経基盤の最も中核的な神経基盤に作用するわけである。
この報告以前にも大うつ病性障害での臨床知見も報告されており抗うつ効果があることが知られている。

こうした急性的な抗うつ効果や報酬系を向上させるような薬剤と認知行動療法のような認知の矯正・強化を標榜する介入を行うと相乗作用で高い改善効果があるんじゃないかと思うがどうなんだろうか。

toyo

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(コメント) 日本では、麻薬に指定されているようなので、簡単には応用できないかもしれませんが、 鬱(うつ )が社会的な問題となっている現在、少しでも効果があるものであれば、利用できるようにして欲しいものです。 ...... [続きを読む]

» うつ(鬱)に顕著な効果 ケタミン(麻薬) [健康情報 気になるニュースをお伝え]
(コメント)  麻薬であるケタミンに、少量でも高い抗うつ効果があるとした研究結果が、米科学誌サイエンス(Science)に発表されたようです。 発表したのは、米エール大(Yale University)の研究チームです。 市販されている抗うつ薬は、効果が現れるまでに数週間かか…... [続きを読む]

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