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2010年7月 8日 (木)

フルボキサミンは統合失調症の認知機能障害を改善させる(症例報告)

Fluvoxamine improved cognitive impairments in a patient with schizophrenia
Tomihisa Niitsua, Yukihiko Shirayamab, Mihisa Fujisakia, Kenji Hashimotoc and Masaomi Iyoa

Letter to the Editor (Case report)
Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry
Article in Press

アブストラクトは無いので自分で要約しました
著者らの以前の検討で、統合失調症患者に通常の薬物治療にSSRIであるフルボキサミンとパロキセチンを付加した治療を行ったところ、フルボキサミンを付加した場合だけに認知機能障害の改善が見られた。また著者らの動物実験の研究でも統合失調症のモデル動物を用いて検討したところフルボキサミンは認知機能の改善効果が見られた。今回は、フルボキサミンの付加療法によって認知機能障害が改善した症例を報告する。
対象は24歳女性(元大学生)の統合失調症患者。21歳時発症の比較的単純な妄想型。リスペリドン2mg/dayで奏功し陽性症状は完全消失した。しかし大学の講義を理解することが困難で、注意や記憶の低下を自覚していた。24歳時に著者らの病院を受診し、リスペリドン1mg/dayで経過。陰性症状が強く、意欲動機付けの低下、会話の貧困があり引きこもり生活を送っていた。簡単な家事が出来るものの、就職や教育を受けることに困難さを感じたりと認知機能障害を自覚しており強い不適応感を自覚していた。
WAIS-ⅢはフルIQは95であった。認知機能障害を複数の神経心理学的検査で評価した。流暢性を評価するletter fluency test、category fuluency test、実行機能、運動速度などを評価するTrail Making Test、選択的注意、反応抑制を評価するStroop testを行った。これらの成績はTrail Making TestのBの所要時間引くAの所要時間(実行機能の指標)を除いては全て対照健常者のデータの2標準偏差を下回り有意に低下していた。
患者の同意を得てからフルボキサミン50mg/dayの投与を1ヶ月間実施した。母親の報告では引きこもりや会話の貧困が改善したという。SANS(陰性症状の評価尺度)は69から41と大きく改善した。付加療法開始前と同じ検査バッテリーを実施したところ、ほとんどの検査項目で成績が改善した(それでもcategory fuluency testや、Stroop testの幾つかの項目では健常者群よりは低下したままであった)。今回用いた神経心理検査バッテリーの練習効果を同年代の3人の健常者で評価したところz得点で0.6であったが、本患者の成績改善はz得点で1.0であり、フルボキサミン投与による改善効果であると考えられた。フルボキサミンは陰性症状と関連する認知機能障害を改善させたと考えられた。
本結果の精神薬理学的説明について、フルボキサミンは他のSSRIと異なってシグマ1受容体のアゴニスト作用がある。冒頭で紹介した著者らの先行研究ではパロキセチンは改善効果が見られず、フルボキサミンで改善効果があったので、本症例においてもシグマ1受容体を介して陰性症状と認知機能障害を改善させたと言える。

という研究。
抗うつ薬のSSRIであるフルボキサミンを統合失調症の患者さんに付加療法として投与したところ陰性症状と認知機能障害が改善し、それはシグマ1受容体の促進作用によるだろうという大変わかりやすい事例検討である。
1ヶ月間のフォロ―アップなので神経心理検査についてpractice effectによる見た目の成績改善が考えられるが、それは別の健常者で効果量を量って、患者さんの成績改善のほうが大きいので薬剤の効果であると論じていてまあ適切な手続きである。

それでなんと言ってもシグマ1受容体なんですが、論文や学会でよく聞くし出入りしている製薬会社のMRの方もよく認知機能との関連についてどうなんですかと聞いてくるんですがさっぱり詳しくないもので、ちょっと教科書やネットで調べてもよく分からない。。
まずwikipediaではシグマ受容体をオピオイド受容体に分類しているが、ネスラーの分子神経薬理学の353ページで「現在ではこのシグマ受容体はオピオイド受容体のアンタゴニストであるナロキサンで桔抗されないことから真のオピオイド受容体ではないことが知られている。」と書いてある。その後「その受容体はまったく理解が進んでいない未知のミトコンドリア蛋白質であるらしい。」と書いてある。他方でStahl先生のEssential Psychopharmacology(2nd edition、今は3版が出ていますが、、)でもシグマ受容体の記載がほとんどなく、アゴニストは新規抗うつ薬の標的となるが"sigma  enigma"が現在も残っていると記述されている。行動薬理学研究ではアゴニスト、アンタゴニストでいろいろ文献があるんですが、ちょっと追い切れないのでそれはまたということであるが、時間のあるときに、脳のどの部位に発現するタンパクか、アゴニスト、アンタゴニストが他のモノアミン系の神経伝達機能にどう影響するか、について分かればおおかたの精神症状や認知機能への改善効果のメカニズムが推測できるんだが、、、

いずれにしてもフルボキサミンの付加投与で陰性症状と認知機能障害が改善するので前頭前野な内側部含めた皮質領域の正常化に寄与しているのは間違いないだろう。また1ヵ月の短さを考えるとSRI作用としてというよりも別な作用ということでシグマ受容体の促進作用が大きいんだろう。

toyo

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